「高校を中退してしまったけど、主婦になった今からでも高校卒業資格をとってみたい」そう考え、通信制高校をひとつの選択肢に入れている人もいらっしゃると思います。
主婦の場合、もう一度学校に通うとなると家事や育児との両立が問題となりますが、通信制高校にはその問題点を解消できるような仕組みがあります。例えば、全日制高校に比べ、基本的に少ない登校日数で卒業できます。特に私立では、登校の頻度は各自で自由に選択可能です。週1日程度のスクーリングで済ませることもできますし、年間3〜5日で卒業できる学校もあります。その他オンライン授業で空いた時間を有効活用できたり、単位取得に必要なレポートの提出もインターネット上で完結できたりするのが通信制高校の特長です。また主婦にとっての大きなメリットとして、卒業までのサポートが手厚いこともあげられます。
高卒資格が得られれば、応募できる仕事も増え、就職できる可能性も高まります。高卒資格が必要な国家試験の受験も可能になりますので、新たな進路を見つけるきっかけにもなるでしょう。
この記事では、「何かと制約の多い主婦でも通信制高校に通うことはできる」ことを様々な視点からお伝えしていきます。
通信制高校なら家事や育児と両立しながら通える!その理由は?
通信制高校を検討している主婦にとって大きな気がかりとなるのは「家事や育児との両立」ではないでしょうか。結論から言うと、通信制高校には学業以外のタスクを抱えていても通いやすいようなシステムが整っています。
登校頻度が選べる
通信制高校が主婦にとって通いやすいのは、まず「登校頻度を自由に選択できる」ことが理由としてあげられます。
通信制高校では、学校で直接授業を受けることを「スクーリング」といいます。このスクーリング日数を自由に選択できるのが通信制高校の大きな特長です。例えば、週1日程度のスクーリングでいいコースもありますし、年間3〜5日でいいというコースも中にはあります。
子どもが小さくて預けられる場所がない、パートや家事に忙しく学校に通う時間がない。そんな場合は、年3〜5日のスクーリングで卒業できる学校を選択すれば、通学の問題を気にせず済みます。
またスクーリングの形態には種類があり、夏や冬の大型連休にまとめて実施する「短期集中形式」や、宿泊施設を利用しながら数日間まとめて授業をおこなう「合宿形式」のスクーリングがあります。このようなコースを選べば通学する期間を一年のうちに集中させることができるので、家事育児とも両立しやすいはずです。
自分のペースで勉強を進められる
自分のペースで勉強を進められることも通信制高校の特長のひとつです。
通信制高校の多くは単位制を採用しており、留年することはありません。単位を落としても、卒業までにその単位を取得できればよいので、家事育児と両立しながら自分のペースで理解しながら習得を目指せます。
また通信制高校では、基本的に自学自習のスタイルで勉強を進めていきます。一部の私立学校ではインターネットによる映像学習での学習も可能です。そのため生活スタイルに合ったやり方で、すき間時間などを使いながら勉強できます。例えば日中、仕事や育児で思うように勉強時間が確保できなくても、朝や夜にまとめて学習を進めることも可能です。
学校生活に不安を持つ生徒に対するサポート体制が手厚い(私立の場合)
通信制高校では、教員がカウンセラーの資格を保持していることも多く、専門のスクールカウンセラーと一丸となって生徒を支えています。学習に関する悩みだけではなく、進路指導や精神面に至るまで、生徒が無理なく卒業を迎えられるよう手厚くサポートしています。
「高校の勉強から長く遠ざかっていて学習面が心配」「時間の使い方が難しい」など、主婦ならではの悩みがあるのは当然のことです。一人で卒業を目指すのではなく、卒業まで一緒にサポートしてくれる存在はきっと安心材料となるでしょう。
単位や期間の引継ぎが可能で、卒業までの期間をショートカットできる
通信制高校では、以前在籍していた学校の単位と在籍期間を引き継ぐことが可能です。つまり、現役時代にある程度単位を取得して高校を中退しているようなケースなら、必ずしも一からやり直す必要がないということです。これは時間や予算の関係から、できるだけ短期間のうちに卒業資格を取りたいと考える場合には有効な仕組みです。なお、単位や在籍期間の引継ぎには所定の手続きが必要となります。
主婦の通信制高校選び、私立と公立のどちらがいい?
主婦が通信制高校を選ぶ際、公立と私立のどちらがいいのでしょうか?
サポート体制が手厚い私立がおすすめ
確実に高校卒業を目指すのであれば、私立の学校がおすすめです。時間的な制約がある主婦の方でも、空いた時間にオンラインで受講できたり、レポート提出もオンラインで完結できたりと、融通の利きやすさは抜群です。
卒業には欠かせないスクーリングに関しても、私立であれば個々の事情に合わせて柔軟に対応できます。特に小さなお子さんを育てながら通う場合、合宿で遠方に向かうのではなく、日帰りで数日間都合の良い日に合わせて参加する傾向にあります。
学習面では、担任制ないし個別指導が導入され、個別に疑問点の解消や、学習の進捗具合などいつでも相談できる体制になっています。
また卒業まで挫折しないよう、精神面のサポート体制も充実しています。私立の学校の多くで専門資格を持つカウンセラーが配置されており、一人ひとり個別に相談できる環境にあります。こうした支援の取り組みもあり、私立の通信制高校では公立に比べて卒業率は高くなっています。
ただし、サポート環境はあるものの、私立も基本的には自学自習です。通信制高校に通う限り、計画通りに進めていける自主性は、つねに求められることになるでしょう。自己管理能力に自信がない場合は、スクーリングを増やすかオンラインでもサポートが手厚い学校を選ぶとよいでしょう。学校によっては、直接スクーリングに通わなくても、LINEなどのSNSやテレビ電話を通して、いつでも個別相談できる体制を整えています。内容は学習面だけでなく、普段の生活や進路のことでも大丈夫。通学以外の手段で、モチベーションアップをはかれる仕組みは大きな支えとなるはずです。
もっとも気になる学費についてですが、一般的に学費負担が大きいとされる私立の学校であっても、近年では国や自治体の就学支援が拡大しています。特に授業料に関しては、所得の低い世帯であれば制度の対象となり、大幅に負担を軽減できます。
例えば、都内在住などの要件を満たし、都の助成金(私立高等学校等授業料軽減助成金制度)を受けられる場合には、授業料が実質無償となります。
通信制高校の学費については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
公立の通信制高校は決められた日程に登校できることが前提となる
公立高校に通うとしたら、決められた日程で登校できることが前提となります。
まずスクーリングですが、公立では登校日があらかじめ指定されています。決められた登校日に出席できない場合には、単位が取得できません。試験日も同様に、日程が決まっており、私立に比べ時間の融通が利きづらいのが現状です。
その代わり、公立高校では未就学児を預けられる託児室を設置している学校もあります。
費用面に関しては、学費を安く抑えられることが公立高校の最大のメリットです。公立に入学した場合の授業料は、国が実施する就学支援金制度により実質無償となります。入学金も500円ほどで済みます。授業料以外にかかる教科書代や施設費用なども、年間で約3万円程度と割安に設定されています。公立であれば、学費の心配はほとんどしなくてもよいでしょう。
その一方で、学習や就職等のサポートがほとんど受けられないデメリットがあります。
公立ではとくに、学習やその他のサポート面が十分ではないことから、スケジュール管理や学習の進め方はすべて自分次第となります。そのため、強い意志と明確な目的を持って自主学習を進めていく必要があります。
主婦でも通いやすい仕組みを持つ通信制高校を紹介
ここでは具体的に、忙しい主婦でも安心して通える学校やコースをいくつか紹介します。
ルネサンス高等学校
ルネサンス高等学校では成人限定スクーリングを実施しており、おもに忙しい社会人や主婦を対象としています。そのため、年齢を気にせずに受講できます。
鹿島学園・鹿島朝日高等学校
鹿島学園・鹿島朝日高等学校のWEBキャンパスでは、「主婦コース」なるものが存在しています。このコースでは、生徒一人ひとりに担任の個別サポートがつきます。結婚や子育てしながら卒業を目指す主婦を対象に、各々の事情に合わせた学習の進め方やアドバイスなど、個別にきめ細かく対応しています。
一ッ葉高等学校
一ッ葉高等学校の「通学ZEROコース」では、通学がゼロでも卒業できる仕組みになっています。
直接指導が受けられない代わりに、e-ラーニングレポートやメールサポート、電話サポートが充実しており、通学なしでも卒業しやすい環境が整備されています。
ここに挙げた以外にも、社会人向けのコースを設けている学校はたくさんあります。その中で、最も自分に合った学校を選択できるとよいですね。
通信制高校で主婦が高校卒業資格を取得するメリットは?
高校卒業資格を取得できた場合のメリットは何でしょう。これが理解できれば、卒業を目指す意欲を維持するためにも、きっと役に立つはずです。さっそく見ていきましょう。
就職先の選択肢が広がる
高校卒業資格を取得することで、「高卒以上」を応募資格とする求人への応募が可能となります。なお、高卒認定では応募資格が認められません。高卒認定ではなく、卒業資格を取得することで、就職できる可能性が高まります。
国家試験の受験資格が得られる
栄養士などの国家試験を受験するには、高卒資格が必要になります。通信制高校で、高卒資格を取得すればこれらの国家試験を受けられるようになります。ただしこの場合、高卒認定でも受験資格が認められます。
国家資格に合格できれば、専門職につける可能性も高くなります。
主婦が通信制高校に通うための流れは?
いざ通信制高校に通うと決めても、入学までの具体的な流れやどんな手続きをすればよいか、気になるところです。ご自身が当てはまるケースを見ながら具体的に行動を起こしてみましょう。
中卒の場合
基本的な流れとしては「学校説明会→出願→入学試験」の順で入学まで進んでいきます。私立の通信制高校の場合、随時入学を受け付けているところが多く、学校説明会も頻繁におこなわれています。
まずは学校説明会に参加し、学校生活を具体的にイメージできるか見極めましょう。
次に必要書類を準備し、希望校へ出願後に入学試験を受けます。入試と聞くと、学力が心配になるかもしれません。しかし通信制高校の入試は、おもに面接と作文で合否を判定します。学力が問われることはほとんどなく、最低限のマナーを守り適切な態度で面接試験に臨めば大きな問題はありません。
通信制高校の入試に関しては、こちらで詳しく解説していますのでご一読ください。
高校中退の場合
基本の流れは中卒の場合と変わりませんが、高校を中退していれば在籍記録が残っているはずです。まずは学校へ連絡を取り、在籍を証明できる書類を準備しましょう。
単位修得証明書の発行
以前に高校に通っていた場合は、在籍していた学校で単位修得証明書を発行してもらうことが可能です。
単位修得証明書とは、生徒の単位修得や在籍期間に関する情報を記録したものです。この証明書があれば、入学先の学校で現在までの取得単位や在籍期間の引継ぎができます。これまで取得した単位を無駄にせず、必要最低限の期間での卒業が目指せます。
基本的に高等学校では、これらの情報を最低でも20年間保存しています。
まずは念のため、学校に電話連絡をして、単位修得証明書の発行が可能か確認しましょう。
必ず提出用と自身の保管用として2通発行してもらうことを忘れずに。発行されたら、有効期限の有無に注意してください。単位修得証明書の有効期限は最短で6ヶ月間ですが、期限を設定していない学校もあります。
個別説明会で相談する
学校が独自に開催している個別説明会などでも、単位や在籍期間の引継ぎについて相談が可能です。具体的な記録が手元にあれば、卒業までに必要な単位数や期間についてアドバイスが受けられる場合もあります。
まとめ
- 通信制高校では、家事や子育て中でも卒業しやすい仕組みがある
- 私立が実施するネットコースやウェブコースなどでは、授業やレポートの提出などがすべてオンライン化されており、時間がない主婦でも取り組みやすい
- 卒業に必須のスクーリング(登校)も個々の事情に合わせて、様々な形態が用意されている
- 授業料の負担は、国による支援や自治体の支援によって大幅に軽減できる
- 過去に高校を中退している人は、入学にあたり「単位修得証明書」を入手しておく
- 確実に卒業を目指すのであれば、サポート体制が万全な私立高校を推奨
高校を卒業したいという明確な目標を持っていれば、主婦にとって通信制高校はおすすめできる場所です。とはいえ、まだまだ不安が残る場合には、直接学校説明会に参加するなど、学校と少しでも接点を持つことをおすすめします。
社会に出ても、やっぱり卒業したかったと思い直し、通信制高校へ入学する人はたくさんいます。通信制高校の先生たちは、きっとそんな生徒らの気持ちをよく汲み取り、理解してくれることと思います。
新型コロナの状況下もあり、学校説明会や個別相談会はオンラインでも実施されています。より気軽に参加しやすくなっていますので、ぜひつながってみてはいかがでしょうか。