引きこもりや不登校経験者が高校受験をする際、どんな学校を選べば良いのでしょうか。もちろん子どもの能力によるところが大きいですが、高校卒業までを考えると、興味をもって通えることと、そして負担の少ない形で通える学校を選ぶことが大切です。
ここでは、通信制高校・定時制高校・全日制高校の特徴を比較しながら、学校選びのポイントを解説します。また、不登校経験者にお勧めの勉強法も合わせてお伝えします。
今から間に合う、不登校におすすめ勉強法は?
「不登校が続いたけど、全日制の高校入学を目指して頑張りたい」という気持ちをお持ちの子どももいると思います。授業を受けていなかった部分に関しては少しでも遅れた分は取り戻さなければなりませんが、同級生と同じ塾などには通いづらいというのが本音なのではないでしょうか。
「塾には通いづらいけど、効率的に学習をさせたい」そうした家庭におすすめの方法としては以下3つがあります。
- 通信教材を利用する
- 家庭教師を利用する
- 個別指導の塾に通う
通信教材を利用する
もっとも手軽で、選ぶ人が多いのが「通信教材」の利用です。
メリットとしては、学習塾や家庭教師よりもかなり安く申し込めること(月額1,000円程度のものもあり)。中でもリクルート社の「スタディサプリ」も月額980円〜で通信教育を受けることができます。
また映像授業と教材を組み合わせることで、子どもの「わからない」を徹底的に排除し、継続して学習に取り組ませる工夫が施されています。リクルートやベネッセといった大手社の教材は、多数のデータから研究を重ねてたどり着いた形になっていますから、効率面でもかなり信頼ができる教材です。
外出せず自宅で学習を進められるのも、不登校経験者にとってはメリットです。
子どもの自主性が求められますが、費用を抑えて学習サポートをするには一番おすすめの方法です。
また、不登校や発達障害を抱えた子ども向けの教材もオンライン教材もあります。集中力が続くよう、ゲーム感覚で勉強できる仕組みや、小さな成功体験を重ね自信が生まれるようスモールステップでの学習カリキュラムを導入しています。
資料請求は無料ですので、一度パンフレットを取り寄せてみて、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
家庭教師を利用する
家庭教師の良い点は、自宅に講師を呼べるところです。またマンツーマンで教えてもらうことができるので、わからない点を集中的に克服することができます。
定期的な予定を組むことにもなりますので、強制的に勉強をする時間を確保することができます。通信教材では子どもの自主性にしか任せることはできませんでしたが、家庭教師ではそうして点も克服できます。
ネックは費用です。月数万円の費用がかかることが一般的ですので、家計との兼ね合いを考えなければなりません。
大手家庭教師社の一括資料請求もできますので、特徴や費用感を比較してみましょう。
個別指導塾に通う
個別指導塾とは、集団指導でなく生徒ひとりひとりの計画に合わせて講師が指導(個別指導)するスタイルの塾です。机も敷居で区切られているので、他の塾生を顔を合わせなくてもいいことは、不登校の子どもにとって嬉しいポイントのひとつかもしれません。
家庭教師よりも比較的安く、強制的に勉強する時間を確保できるのもメリットです。また個別計画に則って学習を指導してくれますから、受験に向けて効率的に取り組むことができます。
ただし、塾に行くことには変わりありませんので、子供に外出の負担がかかったり、同じ学校の生徒とばったり合う可能性があることはネックとなります。
費用と効果でみればバランスのいい方法ではありますので、おすすめしたい方法のひとつです。
引きこもりからの高校受験、どんな学校が選ばれている?
引きこもりや不登校経験者の進学先としては、主に以下のような高校があります。
- 定時制高校
- 通信制高校
- 全日制高校
- チャレンジスクール(東京都の場合)
- エンカレッジスクール(東京都の場合)
それぞれの特徴は以下の通りです。
通信制高校
入試は作文や面接が中心となるため、勉強が苦手な生徒でもチャレンジできる学校です。様々な学科が用意されており、こどもの興味に合わせた学科(音楽・イラスト・アニメ・ファッションなどなど)を選択することができます。「個性を伸ばしたい」という思いに応えられる環境が整っていると言えるでしょう。
スクーリングも毎日行う必要がない(週3回、年4回など)ため、自分のペースで学習を進めることができます。自学自習が中心となるため、自主的に学ぶ姿勢が求められrますが、サポート校を利用して学習をサポートしてもらることも可能です。
国から認定された公的な学校であるため、卒業すればきちんと高卒資格を得られます。最近では通信制高校から大学進学をする生徒も増えてきており、卒業後の進路も多種多様です。
通学・スクーリング | 毎日のスクーリングを必要としない場合が多く、週3日や年4回など学校によって異なります。 |
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学習・授業 | 教室授業ではなく、自学でのレポート提出が中心となります。教材は紙媒体からインターネット媒体(eラーニング)などがあり、スマホやタブレットを使って学習することも可能です。音楽やファッション、アニメやイラストなど専門分野に特化した学科もあり、個性を伸ばしやすい学習環境が整っています。 |
入試 | 公立の通信制高校は学科試験(国語・数学・英語)がある場合があります(例:東京都)。しかし、その他の都道府県や私立の通信制高校では作文や面接が中心となり、学科試験は実施されません。また非常に高い合格率なのも通信制高校入試の特徴です。 4月だけでなく10月入学するコースも数多くの学校で設置されています。 |
学費 | 初年度の学費ですが、公立の場合は3万円〜、私立の場合は25万円〜(通学中心コースの場合は50万円〜)の学費がかかります。公立と私立でかなり差がありますが、私立の場合も高等学校修学支援金の支給を受けることで費用をかなり安く抑えることが可能です。 |
定時制高校
入試は学科試験を行いますが、面接や作文に比重を置いているため、勉強が苦手な生徒でもチャレンジしやすい学校です。週5日の授業を行うことは全日制と変わりませんが、夜から授業を受けられる点が大きく違い、仕事と学校の両立が可能です。
学習も教室での授業が中心となるため、仕組みは全日制と変わりません。1日の授業時間が短いため、4年で卒業することを前提とされてきましたが、最近では単位制の学校も増えてきており、授業の入れ方によっては3年で卒業できる仕組みも作られています。
学科は普通科が中心となり、専門的な学科を用意している学校が少ないのが難点。ただし、部活動や課外活動などもあり、高校生活の充実度は高い学校であると言えるでしょう。
通学・スクーリング | 週5回のスクーリングが必要になります。夜間部に通学する生徒が多いですが、学校によっては午前や日中に授業を受けること可能です。 |
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学習・授業 | 教室での授業が中心で、学科は普通科がほとんどです。1日の授業時間(時限数)が短いため、4年での卒業が基本でしたが、最近は午前部や昼間部との授業と合わせて3年で卒業できるプランも用意されています。 |
入試 | 学科試験(国語・数学・英語)と作文・面接を行うことが一般的ですが、学力検査を行わない定時制高校もあります。入試は落とすものではなく、生徒の意欲を確認するという意味合いが強いと言われています。 |
学費 | 初年度の学費は公立の場合で約3万円〜、私立の場合で50万円程度〜が目安です。このほかに給食費や積立金がある場合もありますので、もうすこし上乗せして考えておきましょう。 |
全日制高校
入試は学科試験を重視した形で行われるため、自身の偏差値に合わせた学校を受験することが一般的です。倍率が高い高校では競争も起きるため、力を入れて受験勉強する必要があるでしょう。
通学・スクーリング | 週5日のスクーリングが必要です。普通科の場合は学年制をとっているので、1年間に所定の単位を取得できない場合は留年する場合があります(単位制総合学科の場合は例外あり)。始業時間は8:30〜9:00の間にあることがほとんどです。 |
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学習・授業 | 教室での授業が基本です。学期ごとにテストを実施し、成績を決定します。中学校まで行ってきたスタイルと変わりません。 |
入試 | 学科試験や面接を行い、入学者を選抜します。学科試験の点数が特に考慮される点は通信制や定時制との違いです。倍率が高い学校の場合は必ずしも合格するとは限りません。 |
学費 | 文部科学省(平成29年)よると、公立では27万5,991円、私立は75万5,101円が平均であるというデータが取られています。定時制や通信制と比べると大幅に学費が高いことが伺えます。 |
チャレンジスクール
東京都では、不登校経験者や高校中退者向けの受け入れ先として「チャレンジスクール」を用意しています。学校自体は定時制に分類されますが、総合学科であるため、普通の定時制に比べ幅広い教科を選択することができます(福祉・情報デザイン・アートデザイン・技術・創作表現などなど)。
メンタル面のサポートから、カウンセラーやパーソナルチューター(心の担任)、養護教諭なども在籍。不登校経験者の再スタートできる学校として新たな注目を集めています。
都内5つのチャレンジスクール
- 大江戸高等学校
- 桐ヶ丘高等学校
- 世田谷泉高等学校
- 稔ヶ丘高等学校
- 六本木高等学校
エンカレッジスクール
勉強が苦手な生徒を対象とした全日制高校がエンカレッジスクールです。
通常の授業に加え、スポーツや芸術、技術や家庭科などの体験学習を重視しており、さらには30分授業や習熟度別学習、少人数制クラスなど、勉強が苦手な生徒でも集中できる工夫が施されています。
入試で学科試験を行わないことも特徴であり、成績もテストではなく生徒のやる気等を考慮して決定されます。
発達障害や学習障害を持つ生徒がのびのびと輝ける環境作りの一環として、東京都が力を入れて取り組んでいる学校のひとつです。
都内5つのエンカレッジスクール
- 足立東高等学校
- 蒲田高等学校
- 練馬工業高等学校
- 東村山高等学校
- 秋留台高等学校
自分のペースで学びたいなら通信制高校がおすすめ
引きこもりや不登校経験者が、無理なく自分のペースで学ぶことを考えると、通信制高校が一番おすすめです。
毎日学校に通わなくていいので負担が少ない
一番の特徴は、週5日のスクーリングがいらないことです。これまで外出する機会があまりなかった生徒でも、eラーニングなどを通して自宅で学習・レポート作成を進めることができるので、急な負担がかかりません。対人関係で悩むことも少ないでしょうから、こどものストレスも軽減できます。
子どもの個性を伸ばせる多種多様な学科
二番目の特徴としては子どもの個性を伸ばせる多種多様な学科が用意されていることです。イラストやアニメ・音楽・ファッション・アート・情報処理・演技などなど様々な専門学科が用意されています。勉強が苦手な子どもでも、興味を持つ分野に特化して能力を伸ばすことができるのは、通信制高校の大きな特徴です。
用意されている学科は学校によって異なりますので、公式HPや資料請求などを通して確認しましょう。私立の中には全国から通える学校もありますので、お住まいの地域だけでなく選択肢を広げてみましょう。
自分にあった学校を見つけるために見るべきポイント
高校受験はあくまでスタート地点に立つためのものに過ぎず、一番大切なのはきちんと卒業することです。個性や能力を伸ばすことはもちろん、「通学に負担の少ない学校」という観点も選ぶ際には入れてあげましょう。
具体的には以下3点を考えるのがおすすめです。
- 興味を持って通えるかどうか
- 無理なく通学できる距離にあるか
- 通学日数は負担にならないか
興味を持って通えるかどうか
勉強が苦手な子どもにとって、学習は大変辛い事かもしれません。普通科では勉強に目がいかないかもしれませんが、興味を持っている分野の専攻学科があれば少しでも学校に行きやすくなるでしょう。そうした意味では、様々な専攻が用意されている通信制高校は選択肢に入れても良いかもしれません。
無理なく通学できる距離にあるか
高校は中学と違い、電車移動をするケースも出てくると思います。朝の通学時間はラッシュ時になりますので、路線によってはかなりの混雑となります。また、自転車や徒歩移動でも遠距離の場合には体力の消耗が予想されます。「自分の体力で毎日この距離を通学できるか」ということは必ず考慮するようにしましょう。通学の不便さが理由で不登校になっては元も子もありません。無理なく通学できる学校という観点は、不登校や引きこもり経験者の学校選びではとりわけ重要です。
通学日数は負担にならないか
これまで不登校が続いていた子どもにとって、急に週5日のスクーリングを行うことは、体力的にも精神的にもかなりの負担となります。定時制や全日制の学校では欠席扱いとなってしまうので、通学のいらない通信制高校を選ぶというのもひとつの手です。「卒業まで継続できるか」という観点は重要となるので子どもにかかる負担も考慮してあげるといいでしょう。
まとめ
- 不登校経験者の高校進学先としては通信制、定時制、全日制など様々あるが、特にお勧めしたいのは通信制。勉強が苦手な人でもチャレンジできる入試の仕組み、また週5日のスクーリングがいらないことから不登校経験者でも負担なく通学ができる。専門学科が充実しており、個性を伸ばせる環境にあるのもポイントのひとつ。
- 自分にあった学校を見つけるには、無理なく通学できる距離にあるか、通学日数は負担にならないかなどの項目も考慮する。入学はあくまでスタートであり、卒業することが重要。無理なく通える学校を選択することで、再度不登校になるリスクを軽減できる。
- 今から受験勉強をするには、自力で行うよりもガイドを使ったほうが効率的。通信教材、家庭教師、個別指導塾などがお勧めの方法となるが、費用と鑑みて考える。
不登校経験者でも、高校入学のタイミングで活力を取り戻すことは十分に可能です。
全日制だけが高校ではなく、定時制や通信制も立派な高校です。ここから大学進学などをして、将来の夢を叶えている人は大勢します。大事なのは、自分にあった学校を見つけることです。
通信制高校は様々な専攻学科があり、不登校経験者でも通いやすい仕組みが整っています。今まで通信制高校の存在を知らなかった人もこれをきっっかけに一度調べてみてはいかがでしょうか。ネットを使えば資料請求は簡単にできます。パンフレットには様々な情報がのっていますので、気になる学校の資料は積極的に入手してみることをお勧めします。