通信制高校の学費

通信制高校で使える奨学金は何か?安心できる貸付制度を紹介

通信制高校でも、全日制高校と同じように奨学金を利用しながら学校に通うことができます。実際に通信制高校で利用できる奨学金制度は、大きく分けて2種類存在します。

ひとつは、各自治体が運営している奨学金制度。東京都では家庭の状況や収入などに応じて、利用できる制度が異なります。

具体的には育英資金や母子及び父子福祉資金、教育支援資金貸付等の制度があり、無利子で貸与を受けられます。

これらは生徒と保護者の両方がその自治体に居住していることが利用条件となります。

もう一方は、特定の条件に該当する(全国の)生徒を対象とした奨学金制度です。

低所得世帯向けの学費支援である高校生等奨学給付金も、この中のひとつです。

そのほか、特別な事情で保護者を亡くした生徒などを対象とした、あしなが奨学金や交通遺児育英会奨学金。通信制高校に通う生徒向けの奨学金として、阿部育英基金が運営する制度があります。

特長としては、申込スケジュールが組まれていること。支給方法がさまざまであることが挙げられます。支給方法には、返還の必要のない給付型や、貸与型+給付型、つまり一部に対して返還が必要となるタイプなどがあります。

貸与型の場合、ほとんどが無利子で、貸与の期間もあらかじめ決められています

奨学金制度を使って進学を考える際に気を付けたいことはいくつかあります。

まず、これらの奨学金を申請する場合には、余裕を持って準備することです。利用に際してはいずれの場合も、事前の審査が必要になります。申請から実際に奨学金が交付されるまでには一定の期間を要す場合もあるためです。

また、制度を利用する場合にはより一層、目的意識を高く持って学校生活を送る必要があります。学習意欲が高く、3年間で卒業する強い意志がある者が奨学生の審査基準の1つとなっているためです。加えて、奨学金は3年間で卒業できることを前提に支給がおこなわれますので、学問を優先に考えられる姿勢が求められます。

奨学金以外にも支援の仕組みはさまざま存在します。通信制高校では就学支援金の利用により、授業料は実質無料となっています。授業料以外の学費についても、高校生等奨学給付金や、国の教育ローンが活用できます。家計の苦しい世帯でも、支援を受けながら学校に通う選択肢は十分にあるといえるでしょう。

この記事では通信制高校で利用できる、奨学金制度をはじめとした、さまざまな支援制度について解説していきます。

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通信制高校で使える奨学金は大きく2種類

通信制高校で使える奨学金は、住んでいる自治体が実施するものと、居住地に関わらず、特定の条件に該当すれば利用できるもの、に大別されます。

それぞれについて、詳しく解説していきます。

居住する自治体で利用可能な奨学金制度(東京都の場合)

東京都では、都に在住していて、なおかつ利用条件に該当する場合に、以下の奨学金または貸付金制度が利用できます。

  • 育英資金
  • 母子及び父子福祉資金
  • 生活福祉資金貸付
  • 入学支度金貸付制度
  • 受験生チャレンジ支援貸付

順番に見ていきましょう。

育英資金

育英資金とは、勉学意欲がありながらも、経済的な理由から学校に通うことが困難な生徒に対して、都が奨学金を無利子で貸し出す制度です。高校奨学金事業は、かつて日本育英会(日本学生支援機構)によって実施されてきました。ところが、平成17年度以降入学者より各都道府県に移管されることになり、現在では、東京都私学財団が育英資金を運営しています。

国公立・私立問わず利用できる奨学金であり、学費全般に充てることが可能です。貸付月額は私立で3万5千円、国公立で1万8千円となっています。

母子及び父子福祉資金

母子・父子福祉資金は、ひとり親世帯の子どもを対象に、自立につながる経済的援助を目的として貸付される資金のことです。都に6ヶ月以上在住していて、20歳未満の子どもを扶養している母子及び父子家庭が対象となります。

教育目的に関する資金貸付は、修学資金と、就学支度資金の貸付が該当します。修学資金は、授業料を含む様々な用途に使用できます。就学支度資金(受験料、入学金、制服代)は、入学前の支度資金として利用できます。

修学資金の場合、自宅から私立高校へ通う場合であれば、月額45,000円を上限額として貸付されます。

就学支度金は公立高校の場合で16万円、私立の場合で42万円の貸付を受けられます。

貸付には審査が必要で、申請から貸付金の交付までに1ヶ月ほどの期間を要するため、早めの相談が必要です。相談・申請は随時受け付けています。

教育支援資金貸付

教育支援資金貸付とは、所得の低い世帯や、介護等を必要とする世帯を支援する福祉資金貸付制度のなかの一資金です。低所得世帯の子どもを対象に、将来的な世帯の自立を目的として、無利子で貸付がおこなわれます。ただし、育英資金や母子・父子福祉資金の利用枠に該当する場合そちらが優先されます。

母子及び父子福祉資金同様に、世帯の自立を目的としています。教育支援金が、世帯の自立につながることが重要であり、途中で退学するなどして、借金だけが残ることのないよう、慎重な判断のもと審査がなされます。

今後の生計が維持できる見立てがあり、返済の見通しが立てられる世帯と判断されれば、貸付を受けられます。内容は就学支度費として50万円以内、教育支援金として月額3万5千円以内の貸付です。

入学支度金貸付制度

入学支度金貸付制度は、入学時に必要な資金を無利子で保護者に貸し付けする制度です。

対象は、都内にある私立高校等でかつ制度が利用できる対象校となっていること、入学者の保護者も都に在住していることが条件です。

貸付金額は25万円で、無利子で借りられます。ただし、在学中に返済する必要があります。

受験生チャレンジ支援貸付

受験生チャレンジ支援貸付とは、高校受験の費用などを支援するための貸付制度です。高校の受験料を上限27,000円まで貸し付けます。収入が一定基準以下で、生活保護世帯でないことが利用の条件となります。

【全国の高校生対象】世帯収入の条件に該当すれば利用できる高校生等奨学給付金制度

高校生等奨学給付金」は、生活保護世帯を含む非課税世帯を対象とした給付金制度です。該当する全国の高校生が対象になります。授業料以外の学費を補う目的で受給ができ、奨学金でありながらも、返還の必要はありません。

国が資金を補助している制度でありますが、運営は各自治体がおこなっています。そのため詳しい内容は、住んでいる自治体に問い合わせが必要です。

【全国の高校生対象】特定の事由に該当すれば利用できる奨学金制度

保護者が特定の事由で亡くなった場合などに無利子で受けられる奨学金があります。また、通信制高校に通う生徒を対象に実施される奨学金もあります。こちらは返還義務がありません。

これらの制度の利用には、住んでいる自治体は問われず、全国の高校生が対象となっています。

あしなが奨学金 

あしなが奨学金は「保護者(父または母など)が、病気や災害(道路上の交通事故を除く)、自死(自殺)などで死亡、または保護者が1~5級の障害認定を受けていて、経済的な援助を必要としている家庭の子ども」が対象となる奨学金です。定時制・通信制を含む高等学校等で利用できます。奨学金の貸与にあたって、成績は問われません。

引用元:https://www.ashinaga.org/media/001/202003/koukouyo_202004_1.pdf

支給額に関しては国公立で、月額4万5千円(うち給付が2万円)、私立の場合だと月額5万円(うち給付が2万円)となります。あわせて「私立高校入学一時金」として、私立校へ入学した予約採用決定者に対しての30万円の貸与制度もあります。

無利子貸与と給付を合わせた形の奨学金で、貸与分は卒業の半年後から20年以内に返還することとされています。

なお、奨学金の支給期間は最短修業年限(通信制の場合は3年間)までです。

交通遺児育英会奨学金

交通遺児育英会奨学金は「保護者が道路における交通事故で死亡した家庭の生徒・学生または、保護者が道路における交通事故で重度の後遺障害者となった家庭の生徒・学生が対象となる奨学金です。定時制、通信制、専攻科なども対象となります。他の奨学金との併用も可能で、学力の基準はありません。

引用元:https://www.kotsuiji.com/howto/

一部給付ありの貸与型の奨学金で、貸与される金額は月額2万~4万というかたちで選択が可能です。返還方法は、最長20年で、月賦・半年賦・年賦払いから選択できます。

また1年次の希望者には入学一時金制度があるほか、奨学金以外にも、大学進学費用や自動車運転免許の取得にかかる費用の補助(返済不要)が受けられます。

申請には保護者の収入条件あります。給与収入者の場合、年収780万円以下、自営所得者の場合は、360万円以下となっています。

給付年数にも上限があり、最短修業年限(3年間)までとなります。

財団法人阿部育英基金奨学生

阿部育英基金は「通信制高校に在学する生徒で経済的な援助が必要と認められる者」を対象に奨学金の給付を実施しています。給付型の奨学金で、月額1万円が給付されます。返還義務はありません。

応募資格に「人物・学力ともに優秀かつ健康でありながら、経済的な援助が必要と認められる者」「1年次に16単位以上の修得が見込まれ、履修科目の評定の平均が3.5(5段階評価)以上と見込まれる者」とあるように、ある程度の学力や、入学後の前向きな学習態度も見られているといってもいいでしょう。

引用元:http://www.zaidanhojinabeikueikikin.or.jp/pdf/r02_bosiyu_siori.pdf

給付期間は、最短修業期間(3年間)で、他の奨学金との併用は不可となっています。

奨学金制度を利用する上でのメリット・デメリット

ここまで紹介してきた奨学金制度を実際に利用する前に、ぜひ知っておきたいメリット・デメリットをまとめてみました。

利用前に審査があり、奨学金受給までにはタイムラグがある

奨学金や貸付金制度には受給要件があるため、その条件や審査等にクリアしなければなりません

奨学金の場合、スケジュールに沿って、奨学生の予約募集がおこなわれることがほとんどです。進学の前年に予約申込がおこなわれ、予約決定から奨学生としての採用という流れになります。必要書類が揃った時点で、奨学金が貸与されることになるため、入学前後に正しく手続きを踏むことも重要です。

制度によっては、申請されてから貸与の金額が実際に交付されるまでの期間を長く要する場合もあります。

貸与の期間は通信制の場合で3年まで

奨学金や貸付金制度では貸与(給付)期間があらかじめ定められています。高等学校であれば通常は3年間と設定されています。仮に3年間で卒業できない場合であっても、貸与期間の延長はされません。3年で卒業できると仮定した上で貸与されているためです。奨学金を受けて進学する場合は、この貸与期間をしっかりと念頭に置いて、勉学に取り組むようにしましょう。

他の奨学金との併用ができない場合も

他の奨学金とは併用不可な場合があります。例えば、阿部育英基金は給付型の奨学金であるため、その分利用条件がやや厳しく、他の奨学金を受け取っている人は対象外となります。

一方で、就学支援金や高校生等奨学給付金の制度は、他の奨学金や貸付金制度との併用が可能です。

返済期間は選択でき、無理なく返済計画を立てられる

返済期間や返済方法は選択できることが多く、個人の返済能力に合わせて調整が可能です。返済期間についてはおおむね10~20年間とされています。

仮に何らかの事情により、返済が困難になった場合でも個々の状況に合わせ、無理なく返済できるよう、利用先の機関が猶予してくれることもあります。例えば、あしなが高校奨学金の場合、「大学・専門学校・大学院などに在学している間や卒業後も経済的事情などで返還が困難であることが認められた場合は、返還を一時的に停止し先に延ばすこと(猶予)ができます」としています。

引用元:https://www.ashinaga.org/media/001/202003/koukouyo_202004_1.pdf

入学一時金の貸与が可能な場合も

各制度のなかには「入学支度金」として入学一時金の貸付を実施していることもあります。奨学金や貸付金の貸与は、入学後に第一回目の金額が振り込まれることが多いため、入学前の納入金や準備品を購入する費用は別途用意しておく必要があります。しかし入学支度金が利用できれば、入学前の費用面での不安はある程度解消されるでしょう。

通信制高校で利用可能な、奨学金以外の負担軽減制度は?

奨学金以外にも、通信制高校において適用できる負担軽減制度はいくつかあります。

国の就学支援金制度

全日制高校と同様に、通信制高校でも授業料の支援制度である「就学支援金」が利用できます。学校側が支援金を受け取り、授業料と相殺するかたちとなるため、実質的にはこの制度の利用によって、授業料が減免されます。

公立の通信制高校の場合、就学支援金の利用で授業料は実質無料となります。

私立の場合も、2020年4月の就学支援金制度改正により、年収590万円未満の世帯において授業料の実質無償化が実現されています。

私立高校対象の自治体による授業料減免制度

私立では、就学支援金のみならず、各自治体が授業料の減免制度を実施している場合があります。東京都では、都内に住む私立高校に通う生徒に対し、授業料の一部を助成しています。世帯年収590万円~910万円未満の家庭が対象で、通信制高校では年額13万5,200円の授業料の補助を実施しています。

日本政策金融公庫の「国の教育ローン」

教育資金の公的な融資制度として、日本政策金融公庫が取り扱う「国の教育ローン(教育一般貸付)」があります。経済的な理由で進学が困難な家庭を対象に融資をおこなっています。生徒ではなく、保護者に融資される点が奨学金と異なります。

融資条件として子どもの学力は問われないこと。一度にまとまった金額を借りられるため、入学前の費用についても補えるというメリットがあります。また、奨学金との併用も可能です。

一方で低所得世帯でも申し込みがしやすいこともあり、競争率が高いことがデメリットです。

まとめ

まとめ
  • 通信制高校で使える奨学金は大きく分けて2種類
  • 住んでいる自治体が実施する奨学金と、居住地に関わらず、特定の条件に該当すれば利用できる奨学金がある
  • それぞれに利用条件があり、事前審査が必要
  • 貸与(給付)の期間はあらかじめ決められており、延長は不可

現在では、自治体をはじめさまざまな団体が経済的に苦しい家庭に向けた進学支援をおこなっています。成績は問われない場合が多く、勉学に対する日ごろの真面目な姿勢があれば、貸与を受けられる可能性は大いにあります。

ただひとつ注意したいのは、自治体等が実施する支援金制度の多くが、世帯の自立支援を目的としていること。また、奨学金事業をおこなっている団体も、勉学に意欲的に取り組む学生を積極的に援助したいと考えていることです。

ですから支援を受ける本人の学生生活に対する意欲や、取り組み方は進学後も非常に重要となってきます。

入学後に勉学がおろそかな状態になってしまったり、結果的に借金だけが手元に残るというような状況になったりするのは最も避けたいものです。

奨学金などの支援を受ける場合には、希望校を選ぶ際と同様、しっかりと自分の目標を見据えて行動するようにしましょう。

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