通信制高校の中途退学率が高いことから、通信制高校の卒業は難しいと言われることがあります。実際はそんなことはなく、全日制と比べても、むしろ条件面はゆるいと考えるのが一般的です。
では、通信制高校を中途退学した人はどのような理由だったのでしょうか。また、卒業をスムーズにするコツはあるのでしょうか。
ここでは通信制高校と卒業の関係について詳しくお伝えします。
通信制と全日制ではどちらの卒業条件が難しい?
通信制高校の卒業は難しいと言われますが、それは全日制と比べても難しいのでしょうか?そもそも通信制と全日制では学校の仕組みが違うため、比較すること自体が難しいのですが、一般的には通信制のほうが自由度が高く、卒業しやすい条件だと考えられます。
通信制高校では「単位制」というシステムが導入されており、卒業までに74単位を修得することが義務付けられています。ポイントは「卒業までに」という点です。1年目・2年目・3年目で修得単位数がバラバラになっても構いません。また、必ず3年で卒業しなければならないというわけでもありません。そもそも単位制には「留年」という仕組みがないため、自分のペースで単位修得を行うことができます。
一方、全日制の多くは「学年制」です。各学年で修得しなければならない単位数が定められており、すべて修得することが進級・卒業の条件となります。もし修得できなかった単位がある場合は「留年」となり、またその学年をやり直さなければなりません。さらに、多くの全日制高校では、卒業までに修得する単位は74単位を超える場合がほとんどであるため、通信制よりも多く勉強しなければならないことになります。
こう考えると、通信制高校のほうが卒業しやすい条件であることがわかるかと思います。
全日制高校 | 通信制高校 | |
---|---|---|
システム | 学年制 | 単位制 |
在籍期間 | 3年以上 | 3年以上 |
単位数 | 74単位以上(学校の規定による) | 74単位 |
留年 | あり | なし |
通信制高校の中途退学率は高い?
卒業条件は通信制高校のほうが全日制よりも比較的容易となっていますが、中途退学する割合は、全日制よりも通信制のほうが高いのが現状です。
以下は文部科学省が発表している、平成29年度の中途退学者のデータです。全日制が0.9%なのに対し、通信制は4.9%と明らかに高くなっていることがわかると思います。
全日制 | 通信制 | |
---|---|---|
中途退学率 | 0.9% | 4.9% |
参考:『平成29年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』
通信制高校を中途退学した人の理由は?
以下は通信制高校を中途退学した者の主な理由です。
全日制 | 定時制 | 通信制 | |
---|---|---|---|
学業不振 | 8.7% | 5.3% | 6.5% |
学校生活・学業不適応 | 38.9% | 36.6% | 19.7% |
進路変更 | 36.0% | 38.4% | 26.8% |
病気・怪我・死亡 | 4.2% | 3.0% | 5.7% |
経済的理由 | 0.9% | 1.5% | 4.9% |
家庭の事情 | 3.8% | 6.1% | 3.9% |
問題行動 | 4.8% | 3.4% | 1.6% |
その他 | 2.7% | 5.8% | 30.9% |
参考:『平成29年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』
いじめや勉強への熱意を示す「学校生活・学業不適応」は他よりも低いものの、「経済的理由」や「その他」の値がかなり大きいことがわかります。
その他は類型化できない理由を含んでいるため、一般化することはできませんが、ひとつはレポート提出が辛くなる等が含まれることが考えられます。通信制高校のレポートは課題プリントのようなものであり、教科書を見ながら解けば簡単なものであることがほとんどですが、提出を先送りにしていくと、どんどん課題が溜まっていきます。この提出が難しくなり、やる気を失い、中途退学へと繋がるケースがひとつ考えられます。
また、生徒の中には本業を持っている人も少なからずおり、それが忙しくなってくると、どうしても課題やスクーリングができなくなってしまう人もいます。
多種多様な人がいるからこそ、様々な事情によって卒業まで辿りづけないケースが少なからずあるようです。
通信制高校をスムーズに卒業するためのコツ
中途退学した人の理由から分析すると、通信制高校をスムーズに卒業するには以下3点に気をつけることが大切であると考えられます。
- 自制心を持って自学自習に取り組む
- 本業との兼ね合いをつける
- 計画的に授業を組む
自制心を持って自学自習に臨む
通信制高校入学後に何より大事になるのは、自制心をもって自学自習に取り組むことです。全日制高校なら強制的に授業の時間で勉強することになりますが、通信制高校の場合は自分で時間を作って課題に取り組まなければなりません。自由度が高いというメリットがある反面、自制心も持って臨まないと、課題を先送りにしてしまうクセがついてしまいます。学習と自由時間のオンオフはしっかりと行い、自分なりの課題への取り組み方を見つけましょう。
もし自分一人で学習を進めることが難しいと感じた場合は、「サポート校」を利用するという手段もあります。運営元は学習塾や予備校などであり、生徒の学習支援に加え、生活面や精神面のフォローまで行っているところがほとんどです。通信制高校とは別に費用がかかることになりますが、自分ひとりで学習を行う自信がない場合は選択肢として考えてみてもいいかもしれません。
本業との兼ね合いをうまくつける
たとえ本業が忙しすぎたとしても、課題提出を行わなければならないことは変わりません。できるだけ高校の課題にあてる時間は確保するよう兼ね合いをつけましょう。
また、3〜4年の卒業を目指すのではなく、5〜6年での卒業に期間設定するのもひとつの選択肢です。通信制高校のいいところは、卒業までに3年を超える時間がかかってもいいところ。自分のペースで卒業までの時間を設定してもいいのです。
本業が忙しい場合は、無理のないスケジュールを組み、コツコツと課題をクリアしていきましょう。留年がない通信制高校のメリットをフルに活かし、自分のペースで卒業まで進むことが大切です。
計画的に授業を組む
通信制高校は単位制のため1年でとる単位数は自分で決めることができますが、スローペースすぎるといつまでも単位が修得できません。「1年で20単位とる」など、具体的な目標を設定して、単位修得を目指しましょう。
通信制高校を卒業するための条件
最後に通信制高校の卒業条件をまとめました。そんなに難しい条件でないことがわかるはずです。
- 在籍期間3年以上
- 74単位以上の修得
- 30単位時間以上の特別活動
在籍期間3年以上
たとえ2年以内に所定の単位数をとったとしても、最低3年は在籍することが義務付けられています。編入や転入の場合は前の学校の在籍期間を含めることが可能です。
74単位以上の修得
卒業までに必要な単位数は74単位です。単位はレポート提出・スクーリング・単位認定試験をクリアすることで修得できます。1単位修得するのに必要なレポート提出とスクーリングの回数は、教科ごとに異なります。編入・転入の場合は前の学校で修得した単位数を含めることが可能です。
30単位時間以上の特別活動
特別活動とは、HR(ホームルーム)や、文化祭、修学旅行など、授業以外の活動のことです。教科の授業の他にもこれらへの参加が卒業条件に含まれています。
まとめ
- 通信制高校は卒業が難しいと言われるが、全日制の条件と比べて厳しいわけではない。むしろ条件は全日制よりもゆるいと考えられる。
- しかし、通信制のほうが中途退学率が高いのはデータからも明らか。文部科学省のデータによると、全日制の退学率が0.9%なのに対し、通信制は4.9%となっている。
- 学業不振やいじめなどの人間関係で退学する人は少ないが、類型化できない様々な理由によって退学している人が圧倒的に多い。
- 通信制高校をスムーズに卒業するには、自制心をもって学習に取り組むこと、本業との兼ね合いをうまくつけること、計画的に授業を組むことなどがあげられる。じぶんひとりで学習を進めることが難しい場合はサポート校との併用も考える。
通信制高校の卒業は難しいと考えられていますが、決してそんなことはありません。計画的に課題をクリアし、スクーリングもきちんとおこなっていれば問題なく卒業することができます。全日制と比べ情報が少ない分不安になるかもしれませんが、卒業要件に関してはなんら問題ありません。自分の興味のある高校があるなら、そこにチャレンジしましょう。