「通信制高校に興味があるけど、授業ってどんな感じなんだろう……」
特に、勉強が苦手な生徒にとっては通信制高校の授業については気になるかと思います。
この記事では、
- 通信制高校の授業(=スクーリング)について
- スクーリングのスケジュール
- スクーリングをできるだけ受けたくない人向け対処法
についてお伝えします。
通信制高校のスクーリングとは?授業内容とスケジュールについて
通信制高校にも授業(スクーリング)がある
「通信制高校」の授業というと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか?「オンライン授業などを受けて、とにかく自宅学習」と思い浮かべる方も多いと思います。
通信制高校には、「スクーリング」と呼ばれる登校日があります。これが全日制高校で言う「授業」にあたり、「面接指導」とも呼ばれます。
スクーリングでは、生徒が学校に登校し、直接教師に指導を受けます。学校によっては別にスクーリング会場を設けている場合もあります。
体育やホームルーム活動なども含まれるので、「スクーリング=学校での座学授業」というわけでもありません。
高校を卒業するために必要な単位は74単位以上ですが、そのうち30単位以上をこの「スクーリング」で取得しなければいけない仕組みです。
1単位は、全日制高校では「週に1コマ授業がある」ことを指しますが、通信制高校では「添削指導○回、面接指導○回」と決まっています。
例えば、数学で1単位を取るためには「添削指導3回、面接指導1回」となっています。
スクーリングの頻度は自分で選べる
スクーリングの頻度は、自分で選ぶことができます。
- 平日に定期的に通学する「通学型」
- 年数回の通学で済む「集中型」
- 合宿形式の「合宿型」
おおむねこのように分類されます。それでは、以下で解説していきます。
①平日定期的に通学する「通学型」
「通学型」は、平日に週3~5日、学校に登校するスタイルです。
制服があるところもあり、通う日数からも全日制高校に近い学校生活が送れます。
登校の頻度が多いため、学習のサポートを受ける機会も増やせます。課外活動やイベントなど、より高校生活を楽しみたい方におすすめです。
また、万が一学校にいけなくなったとしても、集中型のコースに切り替えるなどの対策がとれます。
多様な生徒が在籍していることが前提のため、サポートとしてスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが在籍しているところもあります。
②年数回の通学で済む「集中型」
「集中型」は、年に数回のスクーリングを行います。
登校日数を少なくしたいひとにおすすめです。
学校によっては、年間で13日の登校で済むところもあります。人間関係が煩わしかったり、体調面に不安がある人に適したスタイルといえるでしょう。
登校の日数が少ない分、学校から学習サポート・進路指導を受ける頻度が下がるのがデメリットです。
③合宿形式の「合宿型」
集中型の特化として、「合宿型」もあります。おおむね宿泊学習のような内容で、3泊4日で終わるところも。
イベント事を楽しみたい人・登校日数をとにかく少なくしたいひとにおすすめです。
数日間他人と過ごすことになるので、対人関係に不安を覚えるひとには不向きかもしれません。
授業内容はレポートでわからないところの解決が中心
通信制高校では、普段の学習を「レポート」(添削指導)で行います。
「レポート」とは、問題集のような内容で、テキストの穴埋めを課す学校もあります。
授業内容は、この「レポート」でわからないところを解決する絶好の機会となります。
座学授業のスクーリングはおおむね全日制高校の授業のような形式です。
黒板の前に先生が立ち、生徒は机に座り、同じテキストを見て授業をしていきます。
また、通信制高校の生徒は全日制高校より絶対数が少ないです。
高等学校の生徒数の約92%を全日制高校の生徒が占めるのに対し、通信制高校の割合は約6%(参考:文部科学省『参考資料1 高等学校通信教育の現状について』)。
したがって、ともに授業を受ける生徒の人数も、全日制高校より少人数になるでしょう。
また、学習の基礎を重視するので難易度は低め。科目によっては中学生の範囲の復習から始まることもあります。
学習に不安のある生徒も、安心して取り組むことができます。
ただ、難関大学の受験を考えているような学力の高い生徒には、少し物足りないところがあるかもしれません。
その場合は最初から、進学コースなどの学力の高い生徒向けのコースを選んでおくとよいでしょう。
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学校によってはユニークなスクーリングを実施するところも
スクーリングといえば座学授業、もしくは体育の実技授業といったイメージが強いです。しかし、学校によっては独自の内容のスクーリングを実施するところもあります。
以下、ちょっと変わったスクーリングを実施しているところをご紹介します。
スクーリングをより楽しむための参考にしてみてください。
ルネサンス高等学校
茨城県、愛知県、大阪府に学校のある「ルネサンス高等学校」。
このなかでも首都圏・東日本の生徒が通う「ルネサンス高等学校」のスクーリングは、
- 男子スクーリング(年齢関係なく、男子限定)
- 女子スクーリング(年齢関係なく、女子限定)
- 親子スクーリング(保護者といっしょに参加できる)
- 成人スクーリング(成人している生徒が参加できる)
- 日帰りスクーリング
以上から選択が可能です。「合宿型」のスクーリングのため、年4日で終了するのも魅力。(指定の映像授業の視聴は必要)
自然豊かな立地にあるこの学校では、林間学校のような体験授業があります。
天体観測、そば打ち、ハイキングなど、内容は毎年変わります。
飛鳥未来高等学校
北は札幌、南は福岡までキャンパスのある、広域の通信制高校「飛鳥未来高等学校」。
全国に専門学校を展開する学校法人・三幸学園が運営しています。
そのため、普通の全日制高校では勉強できないような、多彩な科目を勉強できる環境があります。
希望者は普段の授業にプラスして、
- 「ヒップホップ」「剣道」「卓球」「ヨガ」などの「スポーツ」
- 「フラワーアレンジメント」「アロマテラピー」などの「HOBBY」
- 「ブライダル」「ネイル」「ヘアメイク」などの「スペシャリスト」
以上のような「トライアルレッスン」が受けられます。(キャンパスにより内容に違いあり)
専門学校に進学したい生徒にとっては、進学する前に勉強に触れられるよい機会となるでしょう。
クラーク記念国際高等学校
北海道の深川に本校のある「クラーク記念国際高等学校」。南は沖縄の那覇キャンパスまである、広域の通信制高校です。
2016年には、硬式野球部が通信制高校として初めて甲子園出場したことでも知られています。
クラーク記念国際高等学校では、週5日登校コースに力を入れています。
そのなかでは多彩なコースが展開されており、
- 国際・英語
- IT・プログラミング
- ダンス・演劇・音楽
- アート・デザイン
- 保育・福祉・心理
- スポーツ
- 動物
- 食物
- 難関大学進学
- キャリアプランニング
以上から、さらに「海外大学進学コース」「インターナショナルコース」などに分かれていきます。
入学後のコース変更も可能のため、安心して勉強に取り組むことができます。
あずさ第一高等学校
関東圏に8つのキャンパスをもつ、「あずさ第一高等学校」。
週5日の「スタンダードスタイル」から、年間13日程度の登校の「一般通信制スタイル」まで幅広い通学スタイルに対応しています。
あずさ第一高等学校のユニークさは、「感性を伸ばすオリジナルコース」に見ることができます。
- 保育コース
- 音楽コース
- 声優・アニメコース
- ファッションコース
- ダンスコース
- プログラミングコース
大きく分けて以上のコースがあります。このなかから、さらに細かく「ボーカル専攻」「ギター専攻」「トータルビューティー専攻」「ネイルアート専攻」などに分かれていきます。
スクーリングのスケジュール例
以下は、NHK学園高等学校の集中スクーリングのスケジュール例です。
時刻 | スケジュール |
---|---|
9:30 | ホームルーム |
10:30 | 国語 |
12:20 | 昼食 |
13:10 | 美術 |
15:10 | 世界史 |
16:10 | 体育 |
17:00 | スクーリング終了 |
9:30にホームルームが開始されます。
たいていの全日制高校では始業は9:00で、ホームルームはその前に終ることが多いので、比較すると通信制高校のほうが朝がゆったりめです。
通信制高校の生徒は、ふだん自主性が尊重されるぶん、生活リズムも自分でコントロールすることが求められます。
スクーリングは、生活リズムを整えるチャンスといえるでしょう。
このスケジュールは、「年1回、4日間」の集中型スクーリングの例です。何日間のスクーリングかによって、1日の授業の科目数が変わる可能性もあります。
スクーリングをできるだけ受けたくない場合のおすすめの対策
通信制高校に入学・転入する生徒の中には、「正直、もう学校に行きたくない」という人もいるでしょう。
残念ながらスクーリングをゼロにすることはできません。
しかし、スクーリングの少ない学校・コースを選ぶなどの対策をとることはできます。
①スクーリングの少ない学校・コースに入学・転入する
スクーリングは、卒業のためにはゼロにすることはできません。30単位以上をスクーリングで取得することが卒業条件となっているからです。
ですが、登校日数をできるだけ減らすことはできます。
たとえば、前述した「ルネサンス高等学校」は3泊4日の合宿型スクーリングで終了です。
NHK学園高等学校も、年間に4日のスクーリングとなっています(集中型)。
「できるだけ登校したくない」と思っているなら、スクーリングの日数がすくない学校・コースを下調べしてみてください。
スクーリングが少ない通信制高校まとめ | 通信制高校ナビ(外部ページへ)
集中型のコースを選ぶと、スクーリングを受ける頻度が少なく済む
全日制高校に近い「通学型」よりは、「集中型」のコースを選ぶと、スクーリングを受ける頻度が少なく済みます。
ただ、「もう学校に行きたくない」という気持ちがある人には、数日間他人と生活することになる「合宿型」は精神的に厳しい面もあるかもしれません。
自分に合ったスタイルを選択しましょう。
②スクーリングの不安に対処しておく
そもそも、「スクーリングに行きたくない」と思うのは、「スクーリングに不安な点があるから」ではないでしょうか。
スクーリングを通して友人を作ったり、普通科の全日制高校では勉強できないことを学んだり、スクーリングにもメリットがあります。
もし、勇気を出してスクーリングに行った先で、
- 今まで周りにいなかったけど、共通の趣味がある友人に出会えた
- 勉強への意欲を失っていたけど、特別科目でやってみた課題が意外と面白くて進路を決めた
このような変化があったら、「スクーリングに行ってみてよかった」と思えることでしょう。
そう考えると、「なんとなく不安」という気持ちでスクーリングに行かないのは、少しもったいないとは思いませんか?
もちろん、スクーリングを最小限に減らすのも立派な選択肢のひとつです。苦しいと思うものを無理して我慢し続ける必要はありません。
ですが、「不安さえなければ、スクーリングに行ってみたい」と思っているなら、この項目で不安を減らす対処法を考えてみましょう。
人間関係への対処
対人関係に不安を覚えやすい人は、新しい環境で
- 「雰囲気に馴染めるだろうか……」
- 「友達はできるだろうか……」
- 「いじめられたりしないだろうか……」
と考えてしまうことでしょう。
ここではその対処法を考えます。
短い期間の登校なのでいじめがそもそも起こりにくい
通信制高校は、全日制高校より学校に滞在する時間が短いです。
加えて、「全日制高校にはわけあって入学できなかった」生徒も一定数います。
そこで形成される雰囲気は、良くも悪くも「ドライ」です。
なぜなら、「短い期間しかいっしょにいない」という前提があります。
「ここに馴染まなくては」と必死になるようなものではなく、気負う必要はありません。
特に、いじめを経験した生徒には集団生活が怖いかもしれませんが、短い期間しか共にしない通信制高校では、そもそもいじめが起こりにくいです。
コースによっては、「あのクラスメイト、卒業式で初めて見た」ということが起こるくらいです。
友達を作りたい場合は「少しだけ会話」をする
「短い期間しかいっしょにいない」という前提のもと、どのような行動をするかは人によります。
「短い期間しかいっしょにいないんだから、仲良くなりたい」
「短い期間しかいっしょにいないんだから、特に友達がいなくても構わない」
どちらをとるかは完全に個人の自由です。この自由が許容されているのが通信制高校の強みともいえます。
もし、「せっかくだから友達を作りたい」と思っている場合は、「少しだけ」話してみることです。緊張するでしょうが、コミュニケーションは避けて通れません。
「失敗しても短期間しかいっしょにいない」と思えば、「少しだけ」の勇気も出ると思います。
「授業って久々だからだるいね」
こんな他愛もないことで大丈夫です。趣味とか将来の夢とか、気負って上手くプレゼンしようとしなくていいのです。
「コミュニケーションの練習」くらいの気持ちで、そっと話しかけてみましょう。
接する機会が少ない通信制高校の生徒同士は、意外なくらいちょっとしたきっかけで会話が発展することがあります。
体調への対処
体調への不安を抱えている人もいるでしょう。
通信制高校では、基本的に日常生活は自由ですから、どのように過ごすかは個人で決めます。普段からアルバイトなどして体力のあるひとは、スクーリングにそれほど体調面の不安を覚えることはないかもしれません。
ですが、もともと体調がよくなかったり、ふだんそれほど活動的でないために体力のない人は、久々のスクーリングに気後れしてしまうこともあるでしょう。特に体育の授業は不安を感じやすいかもしれません。
事前に先生と体調面の相談をしておく
まずは、事前に先生と相談しておくことが必要です。
持病のある方はそれも含め、先生に伝えておきましょう。先生としても、通信制高校にいろいろな事情の生徒がいることは理解しています。
そのうえで、「この授業は見学したい」などの要望を事前に伝えておくと、先生方もスムーズに対応できます。
授業の合間に少しでも動く
スクーリングでの疲れは、「長時間、慣れない授業を受ける」「長時間座り続ける」ことからも発生します。
慣れない授業には慣れていくしかないですが、座り続けることで起こる疲れには対処が可能です。立ち上がり、少しでも歩くことです。
長時間座り続けると、血流が悪くなり、疲労感が増します。また、単純に学校の硬い椅子に座りっぱなしのせいでお尻が痛いこともあります。
これに対処するには、休み時間に廊下にちょっと出てみるといいでしょう。
椅子に敷けるクッションを持ち込むことも、意外と疲労感に効きます。
まとめ
以下、まとめです。
- スクーリングの形態は自分で選べる。(通学型、集中型、合宿型)
- 興味のある分野を学べる学校を選ぶと、スクーリングが楽しくなる
- スクーリングを少なくするためには、事前の学校・コース選びが大事
- さまざまな生徒が通う学校なので、先生も不安には対応してくれる。相談が大事。
通信制高校という、一般的には少数派の学校に進学するなかで、「スクーリング」は未知のものです。不安に思ってしまうこともあると思います。
ですが、通信制高校を卒業するためにはスクーリングは必須です。
そして、どうせ必須なら、より楽しい時間を過ごしてほしいと思います。
自分の希望・生活スタイルに合った学校・コース選びをして、スクーリングを乗り切ってください。